デグーは、くりっとした目と長い尻尾、そして「アンデスの歌うネズミ」と呼ばれるほどの豊かな感情表現で、私たちを魅了してくれる小さな相棒です。
おやつをねだる仕草や、手から受け取って嬉しそうに食べる姿は、見ているだけで幸せになります。
しかし、ここで飼い主さんが必ず知っておきたい大前提があります。デグーは糖の耐性が高い動物ではなく、糖尿病を発症しやすい傾向があるという点です。
糖分の多い食事が続くと、糖尿病や白内障などの合併症リスクが高まる可能性があるため、「何をおやつにするか」は健康寿命を左右する重要なテーマだと考えておくと安心です。
「モルモットやうさぎが食べているから大丈夫」という感覚で、果物や甘い野菜、市販のおやつを同じように与えてしまうと、デグーにとっては負担が大きくなることがあります。
本記事では、糖質を意識した安全な野菜・野草・枝の選び方と、できるだけ避けたい高糖質食品やNG食品をまとめて解説します。
デグーに野菜や果物は必要?(食事の基本)
結論から述べると、「デグーに野菜や果物を与える必要はありません。」
むしろデグーは糖に対する耐性が高い動物ではなく、糖分の多い食事が続くと糖尿病や白内障などの合併症リスクが高まる可能性があります。
そのため、果物や甘いおやつは基本的に避ける一択で考えておくと安心です。
もし野菜を与える場合は、糖質の少ない葉物野菜を「ごく少量」にとどめるのが無難です。野菜は必須ではないため、体調や便の様子を見ながら、無理に与えなくても問題ありません。
これについては、かなり意識して厳しくしておいた方が良いかと思います。
筆者も糖質や脂質がNGなことは理解していたのですが、うさぎやモルモットにおやつを与えている際にデグーに激しく要求されて、拒否し切れず、ついりんごを与えてしまっていました。
当然、極小にカットしてほんの少しでしたが、デグーの健康を考えるのであれば基本的には避けたいところです。激しく鳴き声を上げられると、どうしても可哀想になってしまいますよね。
デグーのペレットやおやつは、市販品でもうさぎやモルモットに比べて種類が少なく、より良いものを見つけるのも一苦労です。
とりあえずは、牧草を中心にして、おやつは最低限と考えた方が良いでしょう。
主食はあくまで「牧草(チモシー)」
まず覚えておきたい基本として、デグーの食事の中心は牧草です。牧草をいつでも食べられる状態にしておくことが、歯の摩耗と腸の健康の土台になります。
野菜や野草は栄養補給というより、少量のご褒美やコミュニケーションツールという位置づけで考えると、与えすぎを防ぎやすくなります。
牧草の摂取が不足すると、歯の伸び過ぎや腸内環境の乱れにつながるため、野菜を与える日は特に、「牧草をしっかり食べているか」を先に確認する習慣をつけると安心です。
ペレットは「デグー用」を少量
デグーの食事は牧草が基本になるので、ペレットは不足しやすい栄養を補う「補助」として少量与える形になります。ペレットは、デグー向けに設計された低糖質タイプを少量にとどめましょう。
ペレットは栄養バランスを整えやすい一方で、甘味の強いものは糖分が多く含まれている場合があるほか、他種用フードでは配合や添加物の面でデグーに合わない可能性があるため注意が必要です。
ペレットを選ぶときは「デグー用」と明記されたものを選び、甘い香りのする「おやつ風」の配合品は避けておくと安心感が高くなります。
デグーの食事の鉄則は「低糖質・高繊維」

デグーは厳しい自然環境に適応してきた草食性の小動物で、高糖質な食事に体が向いていない動物だと考えられています。
そのため飼育下では、牧草を主役にすること、甘いものは極力避けること、おやつは量だけでなく頻度と内容を管理することが、健康維持の鍵になります。
特別なテクニックよりも、毎日の小さな選択の積み重ねが、糖尿病予防に直結します。
デグーが食べても良い野菜【葉野菜中心】
デグーに野菜を与えるなら、「糖質が少ない葉物野菜を少量、たまに」という考え方が基本になります。
葉物野菜は牧草ほどではないものの、食物繊維や微量栄養素を補助的に取り入れやすく、牧草中心の食生活に無理なく組み込みやすいです。
小松菜、チンゲン菜、大根の葉、ブロッコリーの葉などは、比較的扱いやすい葉野菜と言えるでしょう。
ただし小松菜などはミネラルも豊富なため、同じ食材を毎日多量に与えるのは避け、いくつかの葉物をローテーションして偏りを防ぐと安心です。
生野菜と乾燥野菜、どっちがいい?
生野菜が絶対に悪いわけではありませんが、デグーは個体によってお腹がゆるくなりやすいことがあります。
デグー飼育の初心者さんやお腹が弱いデグーの場合は、乾燥野菜を中心にすると量管理がしやすく、水分過多のリスクも抑えやすくなります。
最終的に野菜は、「生か乾燥か」よりも「低糖質のものを少量」が最も重要なので、体調と便の状態を見ながら最適な形を選びましょう。
注意が必要な高糖質の野菜(根菜類)

にんじん、さつまいも、かぼちゃ、とうもろこしなどの根菜や甘みの強い野菜は、糖質やでんぷんが多いため、デグーにとっては負担になりやすい食材です。
もし与える場合は、乾燥させたものを小指の爪の先ほどのサイズにして、ごく低頻度にとどめるのが無難といえます。
「デグーが好きだから多めにあげたい」と思ってしまいますが、この気持ちこそが落とし穴になりやすいので、この点は意識して厳しめに管理するのがおすすめです。
筆者が飼育しているデグーはにんじんが大好きなのですが、大量に与えるわけにはいかないため、ピーラーで薄く長く削ってから与えています。
長めに削ると食べるのに時間がかかるので、少量でもそれなりに満足感が得られるようです。
デグー向けOK/NG野菜一覧

ここまで、デグーが食べても大丈夫な食品の解説をしてきました。食べても良い野菜と控えた方が良い野菜を一覧表にしたので参考にしてみてください。
| 野菜名 | おすすめ度 | 糖質・頻度 | 判定理由・注意点 |
|---|---|---|---|
| ▼ 葉物野菜(低糖質・おやつに最適) | |||
| 小松菜 | ◎ | 低糖質・週1〜2回 | 定番のおやつ。Caが多いため毎日大量には与えない |
| チンゲン菜 | ◎ | 低糖質・週1〜2回 | バランスが良い。シャキシャキして食いつきが良い |
| 大根の葉 | ◎ | 低糖質・週1〜2回 | 根はNGだが葉は優秀。乾燥させて保存食にも最適 |
| カブの葉 | ◎ | 低糖質・週1〜2回 | 緑黄色野菜で栄養価が高い。根よりも葉を与える |
| ブロッコリー | ◯ | 低糖質・週1回 | 葉や茎の皮がおすすめ。房(つぼみ)も食べられる |
| 水菜 | ◯ | 低糖質・週1回 | 水分補給に。Caを含むため量は控えめに |
| キャベツ | △ | 水分過多・注意 | 水分が多く下痢やガス溜まりの原因になる。外葉を少量 |
| 白菜 | △ | 水分過多・注意 | ほとんど水分。栄養価は低い。冬場の水分補給程度に |
| レタス | △ | 水分過多・注意 | 95%が水分。下痢のリスクがあるためあえて与える必要なし |
| ほうれん草 | × | NG・与えない | シュウ酸が非常に多い。結石になりやすいデグーには危険 |
| ▼ 実野菜・根菜(糖質が高い・水分が多い) | |||
| ピーマン | ◯ | 低糖質・週1回 | 種とヘタは取る。ビタミンC豊富だが好みは分かれる |
| きゅうり | ◯ | 水分補給 | 栄養は少ないが低カロリー。夏場の水分補給には良い |
| にんじん | △ | 高糖質・注意 | デグーには糖分が高すぎる。乾燥させたものを極少量で |
| かぼちゃ | △ | 高糖質・注意 | 糖質・デンプン過多。肥満や糖尿病の原因になりやすい |
| さつまいも | △ | 高糖質・注意 | 甘すぎるため基本的には非推奨。腸内で発酵しやすい |
| とうもろこし | △ | 高糖質・注意 | 実は糖質・デンプンの塊なのでNG。皮とひげならOK |
| トマト | △ | 水分過多 | 実は食べていいが水分が多い。ヘタ・葉・茎は有毒でNG |
| オクラ | △ | 少量 | 種は取る。ネバネバ成分はOKだが、与えすぎない |
| 豆苗 | △ | 葉のみOK | 豆の部分は中毒リスクあり絶対NG。葉と茎のみ少量 |
| もやし | △ | 水分補給 | 栄養は少ない。水分補給にはなるが傷みやすいため注意 |
| じゃがいも | × | 絶対NG | 芽や皮のソラニンが有毒。加熱しても与えてはいけない |
| ▼ 香味野菜・ハーブ(嗜好品として) | |||
| 大葉(シソ) | ◯ | 週1回 | 殺菌作用あり。香りが強いため好き嫌いは分かれる |
| パセリ | ◯ | 少量 | 栄養豊富だがCaも多い。おやつのトッピング程度に |
| セロリ | ◯ | 少量 | スジは喉に詰まるため取る。葉の部分がおすすめ |
| 春菊 | ◯ | 少量 | 生のままでOK。独特の香りを好む子もいる |
| ネギ類全般 | × | 絶対NG | 玉ねぎ・長ネギ・ニラ・ニンニク。溶血性貧血を起こす猛毒 |
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※デグーは糖尿病になりやすいため、糖質の高い野菜は極力控えてください。
デグーにおすすめの野草・葉もの
デグーのおやつには、野菜よりも、自然の食性に近い野草や乾燥ハーブの方が適している場合があります。
タンポポ、オオバコ、クローバー、ハコベ、桑の葉などは嗜好性が高く、市販の乾燥野草としても人気です。乾燥タイプは水分過多のリスクを抑えつつ香りや食感を楽しめる点が魅力です。
自分で採取する場合は、除草剤や排気ガスの影響がない場所を選び、よく洗ってしっかり乾かすなど清潔に処理してから与えるようにしましょう。
かじり木
りんご、梨、桃などの果樹の枝は、歯のケアとストレス解消の両面で役立つことがあります。
「実」を食べさせるよりも、枝や葉で香りやかじる欲求を満たす方が、デグーらしいおやつの形に近づきます。
甘いものを控える必要があるデグーにとって、こうした「行動を満たすおやつ」はとても相性のよい選択肢です。
【要注意】果物は与えてもいい?

記事の始めにも記述しましたが、結論として果物は基本的に避けた方が良いでしょう。
デグーは糖に対する耐性が高い動物ではなく、糖尿病リスクが高い傾向があるため、果物を習慣化することはおすすめできません。
どうしても与える場合でも、極小量を超低頻度にとどめ、体重の増加や飲水量の変化がないかを慎重に観察する必要があります。
果物系の香りを楽しませたい場合は、実ではなく、よく洗って乾燥させたりんごの皮や、いちごの葉などを選ぶと、糖分の負担を抑えながら嗜好性を満たしやすくなります。
筆者は、りんごの実やバナナを小さくカットして習慣的に与えてしまっていました。そのため、後から習慣を変えるのがとても大変でした。
今では、写真のように細く削ったりんごの皮を与えるようにしています。
絶対に与えてはいけないNG食品
デグーに与えてはいけない食材には、中毒リスクがあるものと、代謝や消化に強い負担をかけるものがあります。
ネギ類は溶血性貧血を起こす危険があり、アボカドには小動物に有害な成分が含まれる可能性があるため、必ず避ける必要があります。
また、ジャガイモの芽や緑化部分も毒素のリスクがあるので与えないでください。
生の豆類は消化器トラブルの原因になりやすく、人間用の加工食品であるパンやお菓子、ご飯などは、糖質・塩分・油分の面で不向きです。
市販のおやつでも、砂糖や糖蜜が使われているタイプはデグーには不向きなので注意しましょう。
さらに、うさぎやハムスターなどの他種用フードは、栄養設計や甘味添加の可能性があり、デグーに合わないことがあります。基本は「デグー用」と明記された低糖質設計のフードを選ぶのが安全です。
まれに、ドライフルーツに「デグーも食べられる」と記述されていることがありますが、フルーツ自体にも糖分が含まれていますし、砂糖がかかっているケースもあるため、避けておくのが無難でしょう。
こちらは、絶対に与えてはいけない食品の一部です。参考にしてみてください。
| 食品名 | 判定 | 危険な理由 |
|---|---|---|
| ネギ類全般 (玉ねぎ・ニラ・ニンニク等) |
× | 赤血球を破壊し、溶血性貧血を起こす猛毒です。 |
| アボカド | × | 「ペルシン」という成分が小動物には致死性の毒になります。 |
| じゃがいもの芽・皮 | × | ソラニン(毒素)を含みます。加熱してもNGです。 |
| チョコレート | × | 中毒成分(テオブロミン)を含み、心臓や神経に作用し死に至ります。 |
| ほうれん草 | × | シュウ酸が非常に多く、結石の原因になるため避けてください。 |
| 人間用の加工品 (パン・お菓子・ご飯) |
× | 糖分・油分・添加物がデグーの内臓を壊します。絶対に与えないでください。 |
※ここに掲載されているものは一例です。迷った場合は「与えない」が鉄則です。
こんな症状があれば早めに受診を
尿病は早期の変化が分かりにくいこともありますが、「食べているのに痩せる、多飲多尿、体重減少、食欲低下」といった異常が見られる場合は注意が必要です。
また、目が白く濁るような変化があれば白内障の可能性もあるため、早めに受診を検討してください。デグーは高糖質食などを背景に糖尿病と白内障が関連して起こることがあるとされています。
まとめ
この記事では、デグー向けの食品について、食べられるものと絶対にNGなものを解説しました。
デグーの健康を守るために最も大切なのは、牧草を主役に据え、野菜や野草は低糖質の葉物を中心に少量だけ楽しませることです。
根菜や果物は極小量にとどめるか、できれば避けるくらいの慎重さが安全につながります。
そして、甘い市販品や他種用フードを選ばない意識を持つだけで、糖尿病や体調トラブルのリスクは大きく下げられます。
おやつをねだられるとどうしても心が揺らいでしまいますが、デグーの健康のことを考えて、強い気持ちでしっかり管理していきましょう。
一度、果物やおやつを習慣化するとその後、おやつを絶つのはとても大変です。はじめに1回を拒否できる強い心を持ちましょう。