うさぎの飼育をしていると、「うさぎの避妊や去勢をすると寿命が延びる」という話を聞いたことがありませんか?インターネットに情報が溢れていますし、動物病院でも避妊・去勢を勧めてくることも珍しくありません。
筆者自身、きなこくんを病院に連れて行った際に、去勢を勧められたこともあります。
しかし、飼い主としては避妊や去勢をすることが、本当にうさぎにとって良い選択なのか不安なところ…。
本記事では、うさぎの避妊・去勢で本当に寿命が延びるのか? そして、寿命が延びる理由と実施する最適時期、手術のリスクと対策、病院選び、術後の過ごし方を解説しています。
興味がある方は、最後まで読み進めて参考にしてみてください。
避妊・去勢でうさぎの寿命は延びるのか?

結論から述べると、「避妊・去勢はうさぎの健康寿命を延ばすことが期待できるというデータがある」のは確かです。
研究の結果、寿命延長や疾患リスクの低下が示唆されていて、将来的に発症する可能性がある子宮腺癌・子宮蓄膿症・精巣腫瘍などを予防できる点が、寿命が延びる主な理由とされています。
また、オスのうさぎはマーキングや攻撃性が落ち着くことで、外傷・ストレス・食滞の間接的なリスク低減も期待できます。これらの情報は、獣医療界で広く知られる一般的な見解です。
ただし、筆者個人としては、有効なデータがあっても安易に避妊・去勢に踏み切ることには否定的な考えを持っています。
理由は、提示されている研究の多くは、避妊・去勢をしたグループと、していないグループを比較した集団ベースの統計であり、同一個体で「した場合/しない場合」を直接比較しているわけではないためです。
現実的な話として、同一個体で「去勢をした/しない」を比較・確認することは不可能なので、最終的には飼い主さんの責任で対応することになります。
さらに、すべてのうさぎに対して避妊・去勢を行うことに否定的な論文もあるうえ、去勢手術の問題として、うさぎにストレスを与え、人への不信感が形成されるといった懸念もあります。
筆者の経験をお話しすると、過去に実家で飼っていた犬は、避妊手術後に人間に対する警戒心が強くなり、吠えたり噛みついたりすることが増えました。
動物は、自分に嫌なことをした人や、それに関わった人をしっかり覚えているものです。もし、きなこくんが去勢手術をきっかけに、筆者との暮らしを負担に感じるようになれば、ストレスによって健康寿命を損なう可能性もあります。
このような心情や経験があるため、うかつに去勢手術に踏み出せないのです。
避妊や去勢は非常にセンシティブな問題です。各ご家庭のライフスタイル、個体の性格や健康状態、疾病リスクや年齢、術後ケアの体制などを総合的に考慮し、かかりつけ獣医師と相談のうえで判断されることをおすすめします。
もし自分が信頼している人の家で眠り、翌朝、目が覚めるとおち〇ちんがなくなっていたら…。どんな理由があっても相手を信用できなくなりませんか?そう考えると、きなこくんの去勢に踏み出せないのです。
うさぎの寿命と「健康寿命」を理解する
うさぎの平均寿命は8〜10年ほどですが、重要なのは「健康寿命」です。
健康寿命は、人間の高齢者でも重視される概念で、「痛みや病気に縛られず、介護を要さずに元気に過ごせる期間」のことをいいます。
健康寿命を伸ばすには、室温・湿度の管理、十分な運動量、繊維質中心の食事、静かな環境といった生活の基本を整えることが大切です。
さらに、病気の発生確率そのものを下げる一次予防が重要なので、避妊や去勢は健康寿命を底上げする可能性がある選択肢と言えます。
ただし寿命や健康寿命には、個体差があるため、環境を整え、避妊・去勢を行っても、必ずしも健康寿命が延びるわけではありません。
うさぎ自身の性格や体質、年齢、既往歴、飼育環境などを踏まえ、かかりつけの獣医師と相談しながら、最適な方法を選びましょう。
人間でも同じですが、対処したケースとしていないケースを同じ個体で比較できないので、どちらが良かったかは実は不明です。
避妊・去勢で“何が”防げる?

避妊や去勢によって、うさぎの健康寿命が延びる可能性があることは、ご理解いただけたかと思います。
では、避妊・去勢によって具体的に何が防げるのでしょうか? ここでは、避妊・去勢の主な効果について詳しく解説していきます。
メスうさぎの場合
メスのうさぎは加齢に伴い子宮疾患のリスクが高くなっていき、これが寿命や健康寿命を縮める要因となり得ます。
そのため、適齢期に避妊手術(一般に卵巣子宮摘出)を行うことで、子宮腺癌や子宮蓄膿症などの子宮疾患を発症前に予防し、そのリスクを大きく低減することが期待できるのです。
オスうさぎの場合
オスでは、去勢によって将来的に起こり得る精巣腫瘍の予防が期待できます。
また、メスの場合と異なり、マーキング行為や攻撃性の低下が見込めるため、外傷の予防、ストレス軽減にもつながります。
行動が落ち着けば、栄養状態や休息の質が上がり、消化不良や食滞といった二次的リスクの低減も期待できます。
結果として、日々の生活の質(QOL)が底上げされ、健康寿命が延びる可能性が高くなるのです。
うさぎの避妊・去勢手術の注意点

いつ受ける?月齢の目安と個体差
ご自宅のうさぎの避妊や去勢をしようと決めた飼い主さん!慌てて手術に踏み切らないでください。うさぎの避妊や去勢には、適切なタイミングがあるのです。
うさぎの避妊や去勢は「月齢だけ」で決めてしまうと、失敗する可能性が高くなります。
メスのうさぎは初回発情を迎える5〜6か月以降、オスは精巣が下降する4〜5か月頃が一般的な目安ですが、最終判断は体重・便の状態・食欲・不正咬合・発情の有無など、今の体調を確認して総合的に決めましょう。
もし手術の時期が早すぎると未成熟ゆえの危険があり、逆に成長し過ぎてからの手術は脂肪や基礎疾患の影響が大きくなります。
主治医と相談しながら準備期間を設け、最も安全なタイミングを選びましょう。
手術リスクは?安全性を高めるチェックリスト
うさぎの手術は、術前評価・多段階鎮痛・保温・早期採食をきちんと確認することでリスクを軽減できますが、現実的にゼロにはできないということは覚えておきましょう。
既往歴・投薬歴の共有、ASA分類、必要に応じた血液検査や画像検査で全身状態を見極めてから手術に取りかかったとしても、それで万全とは言い切れません。
手術後の経過が悪く、状態が急変する可能性もありますし、麻酔の効果が強すぎてそのまま目が覚めないことや、最悪の場合は手術中に命を落としてしまうこともあります。
避妊や去勢を行うときには、そうしたリスクも踏まえたうえで、ある程度の覚悟が必要になります。
術後は、食欲低下や無便、歯ぎしり、腹部膨満などの「危険な状態の受診サイン」を家族で共有し、48時間の見守り計画を用意しておきましょう。
避妊・去勢の手術リスクをゼロにすることはできませんが、事前にできる準備や確認を増やすことで、 うさぎの負担や危険を減らすことはできます。以下の項目を目安にチェックしてみてください。
- 事前の健康チェック
- 年齢(月齢)や体重、持病を伝えたうえで、手術時期が適切か獣医師と相談しましたか。
- これまでの病歴・服薬中の薬・サプリなどをメモにして渡しましたか。
- 血液検査やレントゲンなど、必要と説明された術前検査を受けるかどうか話し合いましたか。
- 麻酔リスクについて、「うさぎの場合どんな点に注意が必要か」を説明してもらいましたか。
- 動物病院選び
- その病院で、うさぎの避妊・去勢手術をどのくらい行っているか確認しましたか。
- うさぎの診療実績があり、エキゾチックアニマルに慣れたスタッフがいるか確認しましたか。
- 手術当日の流れ(日帰りか入院か、夜間の見守り体制など)を事前に聞きましたか。
- 万が一のときの連絡先や、緊急時の対応方法を確認しましたか。
- 手術当日の準備
- 絶食・給水の有無など、当日の指示を「うさぎ用にどうするか」細かく確認しましたか。
- いつも食べている牧草・ペレット・好きなおやつを持参してよいか確認しましたか。
- 送迎の時間や、お迎えの目安時刻を書き留めましたか。
- 術後の見守り
- 帰宅後に見るべきポイント(食欲・うんち・呼吸・傷口の腫れや出血など)を聞きましたか。
- 「この状態になったらすぐ受診」という目安を教えてもらいましたか。
- 鎮痛薬や抗生剤の量・回数・飲ませ方をメモでもらいましたか。
- 術後しばらくはジャンプや高い段差を減らすよう、ケージ内のレイアウトを整えましたか。
チェックリストは参考程度にどうぞ!
病院選び:うさぎに強い病院を見極める
うさぎの手術におけるリスクを減らすうえで、病院選びはとても重要なポイントのひとつです。
手術の腕でもっとも差が出るのは経験値です。避妊・去勢の年間件数、緊急時の対応体制、鎮痛の方針、術後連絡の流れ、見積もりの内訳まで具体的に説明できる病院は、信頼度が高いと言えます。
入院と日帰りの違い、再診回数、創部保護の指示、強制給餌のサポートの可否といった点も確認しておきましょう。
複数の病院で同条件の見積もりを取り、距離や通院のしやすさ、説明の丁寧さも含めて総合的に判断することをおすすめします。
ただ、地方では、そもそも選べるほど動物病院の数がない場合も珍しくありません。もし信頼できる病院が近くにない場合は、最悪、隣県まで足を伸ばす覚悟が必要になるかもしれません。
手術をおこなう最適解は?
うさぎの避妊・去勢手術に踏み切る場合、最適解はご家庭やうさぎごとに異なります。
飼育環境、うさぎの性格、繁殖予定の有無、年齢や基礎疾患、通院距離、費用の見通しなどをしっかりと確認・比較しましょう。
手術については、「メスは強く推奨、オスも状況に応じて推奨」という考え方を基本に、主治医と話をすり合わせます。
慌てて手術に踏み切るのではなく、十分に準備を行うことが大切です。
結局のところ、手術までの体調づくりと情報整理、そして飼い主さんとうさぎの関係づくりが、満足度の高い結果につながります。
うさぎの避妊・去勢手術のQ&A
うさぎの避妊・去勢手術については、疑問や不安の声が多く、インターネット上でもさまざまなQ&Aが見られます。
ここでは、代表的なQ&Aをいくつかまとめました。ぜひ確認して、判断の参考にしてみてください。
Q1:寿命は何年延びますか?
現時点で、うさぎだけを対象に寿命の年数差を厳密に比較した研究は、それほど多くありません。
避妊・去勢手術の効果で重要なのは、致命的な子宮疾患を一次予防できることと、オスでも行動面の落ち着きによって外傷・ストレス・食滞といった二次的なリスクを減らせる点です。
つまり「年数の絶対値」よりも、病気や痛みの少ない期間=健康寿命が実質的に延びることが主な効果になります。この観点から、多くの団体や臨床現場が避妊・去勢を推奨しています。
そもそも、お迎えしたうさぎさんの本来の寿命は誰にもわかりません。「避妊・去勢をしたから寿命が何年伸びた!」といったことは、実際には確かめようがないのです。
Q2:太りやすくなる?性格は変わる?
避妊や去勢を行ったうさぎは、発情由来の興奮が落ち着き、飼育が安定しやすくなる一方で、ホルモンの変化によって体重が増えやすくなる傾向があるようです。
対応策はシンプルで、牧草主体の食事バランスを保ちつつ、ペレット量を体格や活動量に合わせて微調整し、無理のない体重管理をしていきましょう。
術後のうさぎは、性格が「穏やかになる」といわれることが多いですが、実際にはうさぎごとの個体差があるため、絶対に穏やかになるわけではありません。場合によっては、飼い主さんへの不信感が強くなり、噛みつきが始まることもあります。
Q3:成熟後・高齢でも手術できますか?
人間と同じで、うさぎも基本的に高齢になると手術のリスクは高くなります。
ただし、病院によっては年齢や基礎疾患、脂肪量の影響を考慮したうえで、術前検査(血液・画像)や麻酔計画、術後の鎮痛・保温・採食支援をより手厚く整えて手術に臨んでくれる病院もあります。
慌てて日程を決めるのではなく、数週間かけて体調づくりと生活リズムの安定をはかり、安全性を高めていきましょう。
最終的には、主治医としっかり話し合いながら、「やるなら何を整えるか/見送るなら代替策は何か」をセットで検討していくことが大切です。
Q4:うさぎが術後に食事を食べません。どうすればいいですか?
術後24〜48時間は、食事を摂らなくなることが多いタイミングです。まずは手術痕の痛みをしっかり軽減してあげましょう。その後、うさぎの好きな牧草や葉物を少量から与えて、採食を促します。
もし飲水が少なければ、水分を含んでいる野菜を与えてみましょう。食べてくれるようであれば、そのまま野菜で水分補給を行います。
野菜を食べてくれない場合は、りんごやみかん、キウイフルーツなど、水分を多く含んだ果物を少量だけ提供するのもひとつの方法です。
食事後は、便の量・形・匂いを観察しましょう。また、12〜24時間の無採食・無便、歯ぎしり、腹部膨満、ぐったりしている様子があれば、危険な状態なので、すぐに動物病院を受診してください。
万が一の際の強制給餌の方法と量は、退院時に確認しておくことが必要です。
夜間連絡や再診の体制がある病院だと、いざという時に安心です。
まとめ
本記事では、うさぎは避妊・去勢手術を行うと寿命が延びるのか、その理由や手術がおすすめか否かについて解説しました。
本記事は「避妊・去勢推奨派/反対派」という視点からではなく、「データを踏まえたうえで、それでも迷う飼い主さんと一緒に考える立場」という筆者の視点から情報を発信しています。
うさぎを適齢期に避妊・去勢すると、高齢期に罹患しがちな「精巣腫瘍」「子宮疾患」などを予防でき、その結果として寿命が延びるとされています。
ただし、現在提示されているデータは、同一個体で「避妊・去勢をする/しない」を比較したものではないため、絶対的なものではありません。最終的には飼い主さんの責任で判断することになるので、しっかりとうさぎの状態を確認しておきましょう。
避妊・去勢をしたうさぎは、穏やかな性格になり、落ち着いて生活を送れるようになると言われていますが、これもすべてのうさぎに当てはまるわけではありません。
場合によっては、昔筆者が飼い犬で経験したように、手術後に飼い主に対して不信感を覚え、噛みついたり吠えたてたりするようになる可能性もあります。この点も、ある程度は覚悟しておきましょう。
ほかにも、手術自体のリスクについて考える必要があります。現在では技術が向上しており、手術の失敗はほとんどなくなってきていると言われますが、それでも現実的に完全にゼロにはなっていません。
手術中にうさぎが命を落としてしまう危険があることも、頭の片隅に置いておいてください。
最終的に、うさぎの避妊や去勢を行うかどうかは、飼い主さんの自己責任になります。自宅のうさぎの健康状態や性格などを考慮し、担当医としっかり話し合ったうえで、手術をするかしないかの判断をしてください。
うさぎの平均寿命は8~10年ですが、8歳以上は人間でいえばシニア世代にあたる年齢です。
できるだけ長く健康的に過ごしてもらうためにも、日頃から丁寧にお世話をしたうえで、避妊や去勢をするべきかどうかをしっかり検討してみてください。
筆者は、可能であれば、きなこくんの去勢はしたくないと考えています。